電子帳簿保存法(電子取引)


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本ページでは、電子取引を行ったときの電子データの取扱い等について、その要点をまとめています(2023年7月1日更新)。


電子取引とは

 

電子取引とは、電子帳簿保存法第2条において、請求書・領収書・契約書等の書類の授受を電磁的方式により行う取引と定義されています。

 

つまり、電子帳簿保存法における電子取引は、取引の大半がインターネットを経由して行われる取引(例えば、インターネットの販売サイトを利用した買い物)に限定されるのではなく、書類の授受が電磁的方式により行われている取引の全てが該当します。

 

取引先と対面で打ち合わせを行って納品を受け、PDF形式の請求書がメールに添付されて送られてきたような場合についても電子帳簿保存法の対象になりますので、大半の事業者が関係することになります。

電子取引の例

 

「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」の問4等の内容を基に作りました電子取引の例は次の通りです。

 

見積書のPDFを添付したメールを送信すること

 

電子メールの本文が送り状の代わりになっているメールを送信すること

 

取引先の利用しているクラウドサービスにログインして、請求書のPDFをダウンロードすること

 

Amazonのサイトから領収書のPDFをダウンロードすること

 

パソコンの画面に表示された注文書のスクリーンショットをとること

 

クレジットカードの利用明細データをPDF形式でダウンロードすること

 

スマホアプリにより決済をし、利用明細等のPDFをダウンロードすること

 

交通系ICカードによる支払データをPDF形式でダウンロードすること

 

インターネットバンキングによる振込みを行い、振込日・金額・振込先名等の記載された電子データをダウンロードすること

 

契約書のPDFをUSBメモリに保存し、取引先にそのUSBメモリを渡すこと

 

※ 取引先の1社から、1回の取引に関して、見積書、納品書、請求書、領収書の各電子データを受け取ったときは、全ての電子データを保存する必要があります。他方、電子データを暫定の書類として受け取り、その後、正規の書類として紙ベースの書類を受け取ったケースでは、紙ベースの書類の方が保存対象になり、電子データは保存不要です。

電子データを印刷して保存することは認められるのか

 

電子取引により受け取ったり送付した電子データは、そのデータが原本であるという考え方から、そのデータ自体を保存することが義務付けられています(電子帳簿保存法第7条より)。

 

電子データを印刷した紙の書類は原本の複製に過ぎないとされ、電子データを破棄し紙の書類だけ保存する方法は認められないことになります。

令和6年1月以降の電子データの保存

 

令和5年度の税制改正により、電子データの保存の要件が大幅に緩和されることになりました。

 

令和6年1月以降も電子データ自体を保存する義務は残りますが、次の条件を満たせば、下記の「電子保存の要件①」と「電子保存の要件②」の両方の要件を満たす必要は無くなり、保存だけしておけばよくなります。

  1. システム対応が間に合っていない等の、相当の理由があること
  2. 電子データの印刷した書類も、整理をした上で保存しておくこと

電子保存の要件①

 

電子保存のための一つ目の要件は、下記のいずれかの条件を満たすことです。

 

取引先にタイムスタンプを付けてもらった上で受け取った電子データであること

 

自社でタイムスタンプを付けた上で送っていた電子データであること

 

取引先から受け取った後、おおむね7営業日以内にタイムスタンプを付けた電子データであること(電子データの保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくことも求められています)

 

取引先から受け取った後、一定の期間内(最長で2ヶ月+7営業日)にタイムスタンプを付けた電子データであること(電子データの保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくことと、電子データを受け取ってからタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めていることも求められています)

 

電子データの記録事項について訂正や削除を行った場合にこれらの事実および内容を確認することができるシステムを使用して、電子データの授受や電子データの保存を行うこと

 

電子データの記録事項について訂正又は削除を行うことができないシステムを使用して、電子データの授受や電子データの保存を行うこと

 

電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を定め、その規程に沿った運用を行い、電子データの保存とともにその規程の備付けを行うこと(最もハードルの低い条件と思われます)

 

※電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程については、電子帳簿保存法取扱通達7-5で記載内容について説明がされている他、国税庁のサイトでそのサンプルが用意されています。

 

参考資料(各種規程等のサンプル)

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm

 

※令和6年1月以降は、電子データの保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておく要件は、廃止されます。

電子保存の要件②

 

電子保存のための二つ目の要件は、下記のすべての条件を満たすことです。

 

税務調査のときに、担当者が電子データの内容を閲覧したり、印刷したりすることができるよう、社内にパソコン、モニター、プリンター等を備え付けておくこと(電子データ自体も社内で閲覧できる場所に保管しておくことも求められています)

 

電子データの記録事項を、取引年月日等の日付、取引金額、取引先のいずれかの項目を指定して検索することのできる機能が確保されていること(電子データの授受を行った事業年度の基準期間内の売上高(×消費税法上の課税売上高)の金額が1千万円を超える場合に限ります)

 

電子データ保存システムの概要を記載した書類を会社に置いておき、税務調査のときに担当者にすぐに渡せるようにしておくこと(「電子帳簿等保存制度の実務(大蔵財務協会)」より、自社開発されたプログラムを使用する場合に必要になります)

 

※検索機能を求めている条件については、電子データのファイル名に規則性を有した記録項目を入力する方法等も認められていますので、電子データの名前の中に日付、取引金額、取引先の各情報を加えた上でPC等の所定の場所に保管し、Windowsのエクスプローラーの検索機能で調べたい電子データを取り出す方法でも問題ありません(詳細については、一問一答の問16や問44を参照してください。)。

 

※検索対象となる取引金額は、消費税の会計処理を税抜経理にしている会社は税抜金額に、税込経理にしている会社は税込金額にするのが原則ですが、電子データに記載されている取引金額のまま記録する方法も認められています(一問一答の問51より)。

 

※電子データの授受を行った事業年度の基準期間内の売上高の金額が1千万円以下の場合は、二つ目の検索要件が免除されます。この売上高の金額には、営業外収益や特別利益の金額は含まれません(一問一答の問45より)。

 

※令和5年度の税制改正により、令和6年1月以降は、判定の基準となる売上高の金額が5千万円に変更されます。また、電子データの印刷した書類を整理して保管し、税務調査のときに担当者にすぐに渡せるようにしておく場合でも、検索要件は免除されます。

重加算税が課されたときのペナルティ

 

電子取引とスキャナ保存による電子データに関して重加算税が課された場合、重加算税が1割増しになります(電子帳簿保存法第8条第5項より)。

 

このペナルティは、令和4年1月1日以降に法定申告期限の到来する国税について適用されます(改正法の附則第82条8より)。

 

※電子データに関して重加算税が課された場合とは、電子データの改ざんや削除をするケースの他、取引先に頼んで架空の請求書等を電子データで受け取るようなケースも含まれます(電子帳簿保存法取扱通達8-22より)。

その他の要点

  •  電子取引による電子データは、各税法で定められた保存期間が満了するまで保存する必要があります(電子帳簿保存法施行規則第4条第1項より)。
  • 請求書等の書類の内容について訂正や加除があった場合、訂正等をする前の書類の電子データは保存せず、最終版の確定した書類の電子データのみ保存することが認められています(電子帳簿保存法取扱通達7-1(2)より)。
  • 消費税の仕入税額控除の適用には帳簿及び請求書等(書面)の保存が必要になりますが、電子取引は書面での請求書等の交付を受けなかったことにやむを得ない理由があることに該当するため、帳簿のみを保存することにより仕入税額控除の適用を受けることができます。ただし、令和5年10月からインボイス制度がスタートし、インボイスの要件を満たした電子データの保存が原則として求められることになります(一問一答の問4より)。
  • ExcelやWordのファイル形式で受領したデータをPDFファイルに変換してから保存することや、パスワードが付与されているデータについてパスワードを解除してから保存することも認められます(一問一答の問38より)。

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