本ページでは、道路面より高い平坦地について、土止費等の宅地造成費を控除することができるのかについて、Q&A形式で要点をまとめています(2022年11月更新)。
土地の高さが道路面より高くなっている農地を相続しました。
法面以外はほぼ平らになっており、傾斜はほとんどありません。
国税庁の定めた宅地造成費の金額表では、土止費は「道路よりも低い位置にある土地について、宅地として利用できる高さ(原則として道路面)まで地上げする場合に、土盛りした土砂の流出や崩壊を防止するために構築する擁壁工事費」と定義されています。
土盛費も同様に「道路よりも低い位置にある土地について、宅地として利用できる高さ(原則として道路面)まで搬入した土砂で埋め立て、地上げする場合の工事費」と定義されています。
ということは、私の農地のように道路面より高い農地には、土止費や土盛費は控除できないのですか?
相続税や贈与税の申告における財産の評価は、一部の財産を除き、財産評価基本通達に定められた評価方法に基づいて行います。
ただ、財産評価基本通達にあらゆる財産の評価方法が定められていませんので、明確に定められていないケースについて、過去の判決や裁決を参考にして評価をすることになります。
過去の判決等の中には、道路面より高い土地について土止費や土盛費の控除を認めたものがいくつか存在します。
例えば、平成27年の地裁の裁判例(東京地裁平成23年(行ウ)第552号)では、接する道路より高度の高い空き地の評価額が争点の一つになりました。納税者側の主張した評価額は、不動産鑑定評価基準に定められた開発法等に基づくものであったのに対し、国側の主張した評価額は、財産評価基本通達に基づくもので、土止費と土盛費が控除されていました。裁判所は国側の主張をそのまま認めています。この裁判例で注目すべき点は、国側の主張した評価額に土止費と土盛費が加味されていたことです。
国税不服審判所の裁決事例の場合、平成19年の事例(裁決事例集第74集357貢)では資材置場として利用されていた土地に対する土止費の控除が、平成24年の事例(高裁(諸)平24第4号)では雑種地に対する土盛費と土止費の控除が、平成29年の事例(名裁(諸)平28第24号)では畑に対する土盛費の控除が、それぞれ認定されています。
※平成24年の事例は、同族会社の所有する土地の評価に関するものです。
道路面より高い土地に対する土止費や土盛費の控除を認めた裁判例や裁決事例の数は、多くありません(原因は、当初の相続税申告の際に、土止費等の控除が積極的に行われてこなかったためと思われます)。
ただ、上述のとおり事例が無い訳ではありません。
また、弊所がこれまで調べてきた範囲内ではありますが、道路面より高い土地に対する土盛費や土止費の控除自体を全否定した事例は見ていません。
以上のことから、弊所では、現時点において、次のように判断すべきと考えています。