擁壁は遺産の一つになるのか


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本ページでは、相続した土地に擁壁が設けられていた場合、相続税申告で擁壁自体も遺産の一つとして計上しなければならないのかについて、Q&A形式で要点をまとめています。


 

父が月極駐車場として賃貸していた土地を相続しました。

 

この土地は隣地より数m高く、その境界上には父が生前中に設置していた擁壁が存在します。

 

私が相続税の申告をする際、この土地だけでなく、擁壁自体も遺産の一つとして申告書に書かなければならないのでしょうか?

 

仮にあなたの相続した土地に擁壁が無かった場合、大雨により土の一部が隣地に流されて、駐車されていた車に被害を与える危険性が考えられます。

 

擁壁はあなたの土地の利用価値に直結するものであり、土地と不可分一体のものと捉えることが一般的といえます。

 

また、所得税基本通達38-10は次のように定められており、譲渡所得の金額の計算上、土地の造成工事費用は原則として土地の取得費に算入するとしています。

 

埋立て、土盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用の額はその土地の取得費に算入するのであるが、土地についてした防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用の額は、土地の取得費に算入しないで、構築物の取得費とすることができる。

 

法人税基本通達7-3-4においても、土地の造成工事費用は原則として土地の取得価額に算入するとしています。

 

つまり、税務の世界では、原則として、擁壁は土地の構成物として取り扱われています。

 

擁壁を遺産の一つと考える場合、構築物として申告書に計上することになるのですが、構築物の評価について定められた財産評価基本通達96では、構築物から"土地と一括して評価するもの"を除外しています。

 

私見ですが、擁壁は"土地と一括して評価するもの"に該当し、擁壁の価値は接する土地の評価額に含まれていますので、擁壁自体を遺産の一つとして計上する必要はないと考えます

 

ただ、あなたのお父さんが、生前の確定申告において、擁壁の工事費用を構築物として青色申告決算書等の減価償却の欄に記入していた場合は、お父さん自身が擁壁を構築物とすることが適当と考えていたことになりますので、注意が必要になります。

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