適格現物分配による建物の移転


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本ページでは、完全親子会社間で建物を配当したときの要点についてまとめています。


完全子会社側

 

建物の配当直前における帳簿価額を1億円としますと、法人税法第62条の5第3項の規定により、配当時の仕訳は次のようになります。

 

株主総会等における配当決定時 

繰越利益剰余金 / 未払配当金 1億円

繰越利益剰余金 / 利益準備金 1千万円

 

配当の実行時

未払配当金 / 建物 1億円

 

建物の譲渡益や譲渡損は生じませんので、配当をした事業年度における法人税の金額に影響を与えないことになります。

 

また、配当は対価を得て行われる取引ではなく、かつ、消費税法第4条第5項や消費税法施行令第2条に記載されていないため、建物を配当した場合であっても消費税では不課税取引に該当します。

 

なお、建物の帳簿価額は高額であることが多いです。配当を行う時点における分配可能額を超えてしまい、会社法第461条第1項に抵触することのないよう気を付けなければなりません。

完全親会社側

 

建物の配当直前における帳簿価額を1億円としますと、法人税法施行令第123条の6第1項の規定により、配当時の仕訳は次のようになります。

 

配当の実行時

建物 / 受取配当金 1億円

 

損益計算書上では受取配当金1億円が計上されますが、法人税法第62条の5第4項の規定により別表4で同額が減算されるため、税務上の利益はプラスマイナスゼロとなります。

 

また、法人税法施行令第9条第1項第四号の規定により、別表5(1)において利益積立金額に同額が加算されます。

 

建物の取得が消費税上の課税仕入れに該当するかについては、配当をした側(完全子会社)が不課税取引になるため、課税仕入れに該当しないことになります。