税法の関連規定


相続税法第23条の2(配偶者居住権等の評価)

 

1 配偶者居住権の価額は、第一号に掲げる価額から同号に掲げる価額に第二号に掲げる数及び第三号に掲げる割合を乗じて得た金額を控除した残額とする。

 

 

一 当該配偶者居住権の目的となっている建物の相続開始の時における当該配偶者居住権が設定されていないものとした場合の時価(当該建物の一部が賃貸の用に供されている場合又は被相続人が当該相続開始の直前において当該建物をその配偶者と共有していた場合には、当該建物のうち当該賃貸の用に供されていない部分又は当該被相続人の持分の割合に応ずる部分の価額として政令で定めるところにより計算した金額)

 

※上記の時価 = 固定資産税評価額×1.0 × (床面積全体-賃貸部分の床面積)÷床面積全体 × 被相続人の居住建物の持分割合

 

 

二 当該配偶者居住権が設定された時におけるイに掲げる年数をロに掲げる年数で除して得た数(イ又はロに掲げる年数が零以下である場合には、零)

 

イ 当該配偶者居住権の目的となっている建物の耐用年数(所得税法の規定に基づいて定められている耐用年数に準ずるものとして政令で定める年数をいう。ロにおいて同じ。)から建築後の経過年数(6月以上の端数は1年とし、6月に満たない端数は切り捨てる。ロにおいて同じ。)及び当該配偶者居住権の存続年数(当該配偶者居住権が存続する年数として政令で定める年数をいう。次号において同じ。)を控除した年数

 

ロ イの建物の耐用年数から建築後の経過年数を控除した年数

 

 

三 当該配偶者居住権が設定された時における当該配偶者居住権の存続年数に応じ、法定利率による複利の計算で現価を算出するための割合として財務省令で定めるもの(複利現価率)

 

※配偶者居住権評価の基本的な考え方

 

①配偶者の亡くなる直前の配偶者居住権の将来価値 = 一号の時価 × (配偶者他界時点の耐用年数の残年数÷配偶者居住権設定時点の耐用年数の残年数)

 

②①の将来価値を現在価値に割り戻した金額(②は①より減額) = ① × 複利現価率

 

③配偶者居住権の評価額 = 一号の時価 - ②の金額

 

 

2 配偶者居住権の目的となっている建物の価額は、当該建物の相続開始の時における当該配偶者居住権が設定されていないものとした場合の時価から前項の規定により計算した当該配偶者居住権の価額を控除した残額とする。

 

※建物の自用家屋としての評価額=配偶者居住権の評価額+居住建物の所有権の評価額

 

 

3 配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。以下この条において同じ。)を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額は、第一号に掲げる価額から第二号に掲げる金額を控除した残額とする。

 

一 当該土地の相続開始の時における当該配偶者居住権が設定されていないものとした場合の時価(当該建物の一部が賃貸の用に供されている場合又は被相続人が当該相続開始の直前において当該土地を他の者と共有し、若しくは当該建物をその配偶者と共有していた場合には、当該建物のうち当該賃貸の用に供されていない部分に応ずる部分又は当該被相続人の持分の割合に応ずる部分の価額として政令で定めるところにより計算した金額)

 

※上記の時価 = 自用地としての相続税評価額 × (床面積全体-賃貸部分の床面積)÷床面積全体 × 被相続人の持分割合(土地の持分割合と居住建物の持分割合のうち低い方の割合)

 

二 前号に掲げる価額に第1項第三号に掲げる割合を乗じて得た金額

 

※敷地利用権評価の基本的な考え方

 

①配偶者の亡くなる直前の敷地利用権の将来価値 = 一号の時価(土地の未来の価値を合理的に算定することは困難であることから、配偶者居住権の評価と異なり、一号の時価を将来価値とみなす)

 

②①の将来価値を現在価値に割り戻した金額(②は①より減額) = ① × 複利現価率

 

③敷地利用権の評価額 = 一号の時価 - ②の金額

 

 

4 配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地の価額は、当該土地の相続開始の時における当該配偶者居住権が設定されていないものとした場合の時価から前項の規定により計算した権利の価額を控除した残額とする。

 

※土地の自用地としての評価額=敷地利用権の評価額+居住建物の敷地の所有権の評価額

相続税法施行令第5条の7(建物の一部が賃貸の用に供されている場合等の配偶者居住権の価額等)

 

1 法第23条の2第1項第一号に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

 

 

一 配偶者居住権の目的となっている建物(以下この条において「居住建物」という。)の一部が賃貸の用に供されている場合(第三号に掲げる場合を除く。) 

 

イに掲げる価額にロに掲げる割合を乗じて計算した金額

 

イ 当該居住建物の相続開始の時における当該配偶者居住権が設定されておらず、かつ、当該賃貸の用に供されていないものとした場合の時価

 

ロ 当該居住建物の床面積のうちに当該賃貸の用に供されている部分以外の部分の床面積の占める割合

 

 

二 被相続人が居住建物を相続開始の直前においてその配偶者と共有していた場合(次号に掲げる場合を除く。) 

 

イに掲げる価額にロに掲げる割合を乗じて計算した金額

 

イ 当該居住建物の相続開始の時における配偶者居住権が設定されていないものとした場合の時価

 

ロ 当該被相続人が有していた当該居住建物の持分の割合

 

 

三 居住建物の一部が賃貸の用に供されており、かつ、被相続人が当該居住建物を相続開始の直前においてその配偶者と共有していた場合 

 

第一号イに掲げる価額に同号ロに掲げる割合及び前号ロに掲げる割合を乗じて計算した金額

 

 

2 法第23条の2第1項第二号イに規定する耐用年数に準ずるものとして政令で定める年数は、所得税法施行令第129条(減価償却資産の耐用年数、償却率等)に規定する耐用年数のうち居住建物に係るものとして財務省令で定めるものに1.5を乗じて計算した年数(6月以上の端数は1年とし、6月に満たない端数は切り捨てる。)とする。

 

 

3 法第23条の2第1項第二号イに規定する配偶者居住権が存続する年数として政令で定める年数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める年数(6月以上の端数は1年とし、6月に満たない端数は切り捨てる。)とする。

 

一 配偶者居住権の存続期間が配偶者の終身の間とされている場合

 

当該配偶者居住権が設定された時における当該配偶者の平均余命(年齢及び性別に応じた厚生労働省の作成に係る生命表を勘案して財務省令で定める平均余命をいう。次号において同じ。)

 

 

二 前号に掲げる場合以外の場合

 

遺産の分割の協議若しくは審判又は遺言により定められた配偶者居住権の存続期間の年数(当該年数が当該配偶者居住権が設定された時における配偶者の平均余命を超える場合には、当該平均余命)

 

 

4 法第23条の2第3項第一号に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

 

一 居住建物の一部が賃貸の用に供されている場合(第三号に掲げる場合を除く。)

 

イに掲げる価額にロに掲げる割合を乗じて計算した金額

 

イ 当該居住建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。以下この項において同じ。)の相続開始の時における配偶者居住権が設定されておらず、かつ、当該居住建物が当該賃貸の用に供されていないものとした場合の時価

 

ロ 当該居住建物の床面積のうちに当該賃貸の用に供されている部分以外の部分の床面積の占める割合

 

 

二 被相続人が居住建物の敷地の用に供される土地を相続開始の直前において他の者と共有し、又は居住建物をその配偶者と共有していた場合(次号に掲げる場合を除く。)

 

イに掲げる価額にロに掲げる割合を乗じて計算した金額

 

イ 当該土地の当該相続開始の時における配偶者居住権が設定されていないものとした場合の時価

 

ロ 当該被相続人が有していた当該土地又は当該居住建物の持分の割合(当該被相続人が当該土地の持分及び当該居住建物の持分を有していた場合には、これらの持分の割合のうちいずれか低い割合)

 

 

三 居住建物の一部が賃貸の用に供されており、かつ、被相続人が当該居住建物の敷地の用に供される土地を相続開始の直前において他の者と共有し、又は当該居住建物をその配偶者と共有していた場合

 

第一号イに掲げる価額に同号ロに掲げる割合及び前号ロに掲げる割合を乗じて計算した金額

相続税法施行規則第12条の2(耐用年数)

 

施行令第5条の7第2項に規定する財務省令で定める耐用年数は、配偶者居住権の目的となっている建物の全部が住宅用であるものとした場合における当該建物に係る減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定める耐用年数とする。

 

※住居兼貸事務所のような建物の場合でも、建物全体が住宅用であるものとして耐用年数を求めます。

相続税法施行規則第12条の3(配偶者の平均余命)

 

施行令第5条の7第3項第一号に規定する財務省令で定める平均余命は、厚生労働省の作成に係る完全生命表に掲げる年齢及び性別に応じた平均余命とする。

相続税法基本通達9-13の2(配偶者居住権が合意等により消滅した場合)

 

配偶者居住権が、被相続人から配偶者居住権を取得した配偶者と当該配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間の合意若しくは当該配偶者による配偶者居住権の放棄により消滅した場合又は民法第1032条第4項((建物所有者による消滅の意思表示))の規定により消滅した場合において、当該建物の所有者又は当該建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)の所有者(以下9-13の2において「建物等所有者」という。)が、対価を支払わなかったとき、又は著しく低い価額の対価を支払ったときは、原則として、当該建物等所有者が、その消滅直前に、当該配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する利益又は当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を、当該配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(令元課資2-10追加)

 

(注)民法第1036条((使用貸借及び賃貸借の規定の準用))において準用する同法第597条第1項及び第3項((期間満了及び借主の死亡による使用貸借の終了))並びに第616条の2((賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了))の規定により配偶者居住権が消滅した場合には、上記の取り扱いはないことに留意する。

相続税法基本通達23の2-1(一時的な空室がある場合の「賃貸の用に供されている部分」の範囲)

 

法第23条の2に規定する「時価」は、評価基本通達の定めにより算定した価額によるのであるが、同条第2項及び第4項に規定する「時価」を算定する場合において、評価基本通達26((貸家建付地の評価))(2)(注)2の定めにより、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において一時的に賃貸されていなかったと認められるものを「賃貸されている各独立部分」に含むこととしたときは、法施行令第5条の7第1項第1号ロ及び第4項第1号ロに規定する「当該居住建物の床面積のうちに当該賃貸の用に供されている部分以外の部分の床面積の占める割合」についても、当該各独立部分は「賃貸の用に供されている部分」に含めて算定することに留意する。(令3課資2-14改正)

相続税法基本通達23の2-2(「配偶者居住権が設定された時」の意義)

 

法第23条の2第1項第2号及び第3号並びに法施行令第5条の7第3項第1号及び第2号に規定する「配偶者居住権が設定された時」とは、民法第1028条第1項各号((配偶者居住権))に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める時をいうことに留意する。(令3課資2-14改正)

 

 

(1) 民法第1028条第1項第1号の規定に該当する場合(遺産分割によって配偶者居住権を取得した場合)

 

遺産の分割が行われた時(遺産分割協議のときは協議の成立した日)

 

 

(2) 民法第1028条第1項第2号の規定に該当する場合(遺言によって配偶者居住権を取得した場合)

 

相続開始の時

相続税法基本通達23の2-3(相続開始前に増改築がされた場合の「建築後の経過年数」の取扱い)

 

法第23条の2第1項第2号イ及びロに規定する「経過年数」は、相続開始前に増改築がされた場合であっても、増改築部分を区分することなく、新築時からの経過年数によるのであるから留意する。

相続税法基本通達23の2-4(法定利率)

 

法第23条の2第1項第3号の「法定利率」は、配偶者居住権が設定された時における民法第404条((法定利率))の規定に基づく利率をいうのであるから留意する。

相続税法基本通達23の2-5(完全生命表)

 

法施行規則第12条の3に規定する「完全生命表」は、配偶者居住権が設定された時の属する年の1月1日現在において公表されている最新のものによる。

 

※「完全生命表」は5年ごとに厚生労働省が公表しており、現在の最新版は令和4年3月に公表された第23回生命表です。

相続税法基本通達23の2-6(配偶者居住権の設定後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得した当該配偶者居住権の目的となっている建物及び当該建物の敷地の用に供される土地の当該取得の時の価額)

 

配偶者居住権の設定後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得した当該配偶者居住権の目的となっている建物及び当該建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。以下この項において同じ。)の当該取得の時の価額は、法第23条の2の規定に準じて計算することに留意する。この場合において、法第23条の2第2項に規定する「当該配偶者居住権の価額」又は同条第4項に規定する「権利の価額」は、当該配偶者居住権の目的となっている建物又は当該建物の敷地の用に供される土地を相続若しくは遺贈又は贈与により取得した時に配偶者居住権の設定があったものとして計算する。

租税特別措置法施行令第40条の2(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)第6項

 

法第69条の4第1項の規定の適用を受けるものとしてその全部又は一部の選択をしようとする特例対象宅地等が配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される宅地等又は当該宅地等を配偶者居住権に基づき使用する権利の全部又は一部である場合には、当該特例対象宅地等の面積は、当該面積に、それぞれ当該敷地の用に供される宅地等の価額又は当該権利の価額がこれらの価額の合計額のうちに占める割合を乗じて得た面積であるものとみなして、同項の規定を適用する。

措置法通達69の4-1の2(配偶者居住権等)

 

特例対象宅地等には、配偶者居住権は含まれないが、個人が相続又は遺贈(死因贈与を含む。以下同じ。)により取得した、配偶者居住権に基づく敷地利用権(配偶者居住権の目的となっている建物等(措置法規則第23条の2第1項((小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例))に規定する建物又は構築物をいう。以下69の4-24の3までにおいて同じ。)の敷地の用に供される宅地等(土地又は土地の上に存する権利で、建物等の敷地の用に供されているものに限る。以下69の4-24の8までにおいて同じ。)を当該配偶者居住権に基づき使用する権利をいう。以下69の4-24の2までにおいて同じ。)及び配偶者居住権の目的となっている建物等の敷地の用に供される宅地等が含まれることに留意する。

 

なお、措置法第69条の4第1項の規定の適用を受けるものとしてその全部又は一部の選択をしようとする特例対象宅地等が配偶者居住権に基づく敷地利用権又は当該敷地の用に供される宅地等の全部又は一部である場合の当該特例対象宅地等の面積は、措置法令第40条の2第6項の規定により、それぞれ次の算式により計算された面積であるものとみなして措置法第69条の4第1項の規定が適用されることに留意する。したがって、同条第2項の限度面積要件については、当該算式に基づき計算された面積により判定を行うことに留意する。

 

この場合において、配偶者居住権の設定に係る相続又は遺贈により、当該相続に係る被相続人の配偶者が配偶者居住権及び当該敷地の用に供される宅地等(当該被相続人の所有していた宅地等が当該相続又は遺贈により数人の共有に属することとなった場合のその共有持分を除く。)のいずれも取得したときの当該敷地の用に供される宅地等については、措置法令第40条の2第6項の規定の適用はないことに留意する。(令2課資2-10追加)

 

※"配偶者居住権"と"その目的となっている建物の敷地"の両方を配偶者が相続したケースでは、敷地利用権が生じないため、地積の按分は不要になります。

 

(算式)

 

1 配偶者居住権に基づく敷地利用権の面積

 

特例対象宅地等の面積 × 当該敷地利用権の価額 ÷ 当該敷地利用権の価額及び当該敷地の用に供される宅地等の価額の合計額

 

2 当該敷地の用に供される宅地等の面積

 

特例対象宅地等の面積 × 当該敷地の用に供される宅地等の価額 ÷ 当該敷地利用権の価額及び当該敷地の用に供される宅地等の価額の合計額

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