従業員が退職したときの退職所得


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従業員が退職した際の税務上の取り扱いについて、その要点をまとめています(2022年12月更新)。


退職所得の基本的な計算式

 

(収入金額-退職所得控除額)×1/2

勤続年数が20年以下のときの退職所得控除額

 

勤続年数×40万円

 

※勤続年数が2年未満のときは2年として計算します。

 

※勤続年数が10年6ヶ月のようにちょうどでないときは、11年のように切り上げます。

勤続年数が20年を超えるときの退職所得控除額

 

20年×40万円+(勤続年数-20年)×70万円

 

※20年までは退職所得控除額の年単価は40万円で、20年を超えると年単価が70万円に増えます(∴ 勤続年数が長いほど税金は抑えられることになります)。

 

※勤続年数が25年1ヶ月のようにちょうどでないときは、26年のように切り上げます。

短期退職手当等

 

退職する従業員の勤続年数が5年以下であった場合、退職所得の計算式は次のようになります。

 

 

「収入金額-退職所得控除額」の金額が300万円以下のとき

 

⇒ (収入金額-退職所得控除額)×1/2

 

 

「収入金額-退職所得控除額」の金額が300万円を超えるとき

 

⇒ 収入金額-退職所得控除額-150万円

退職金から天引きされる所得税の金額

退職所得の受給に関する申告書が提出されたとき

 

退職者が退職金を受け取る前に『退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書』を会社に提出していたときは、正規の方法で所得税の金額を計算します。計算手順は次の通りです。

 

①上記「退職所得の計算式」で退職所得の金額を求めます。 

 

②①の金額に千円未満の端数があるときは、端数を切り捨てます。

 

③②の金額を次の速算表に当てはめて、所得税の金額を求めます。

 

退職所得の源泉徴収税額の速算表
②の金額(A) 所得税率(B) 控除額(C) 税額=(A×B-C)×102.1%
 195万円以下

5%

0円 (A×5%)×102.1%
195万円超 330万円以下

10%

97,500円 (A×10%-97,500円)×102.1%
330万円超 695万円以下

20%

427,500円 (A×20%-427,500円)×102.1%
695万円超 900万円以下

23%

636,000円 (A×23%-636,000円)×102.1%
900万円超 1,800万円以下

33%

1,536,000円 (A×33%-1,536,000円)×102.1%
1,800万円超 4,000万円以下

40%

2,796,000円 (A×40%-2,796,000円)×102.1%
4,000万円超

45%

4,796,000円 (A×45%-4,796,000円)×102.1%

  

④③の金額に円未満の数があるときは、端数を切り捨てます。

 

(例)退職金の支給額が8,888,800円、勤続期間が10年2か月の場合

 

①(8,888,800円-11年×40万円)×1/2=2,244,400円

 

②2,244,000円

 

③(2,244,000円×10%-97,500円)×102.1%=129,564.9円

 

④129,564円

退職所得の受給に関する申告書が提出されなかったとき

 

退職者が退職金を受け取る前に『退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書』を会社に提出していなかったときは、簡易的な方法で所得税の金額を計算します。計算手順は次の通りです。

 

①退職金の金額に20.42%を乗じます。 

 

②①の金額に円未満の数があるときは、端数を切り捨てます。

 

(例)退職金の支給額が8,888,800円の場合

 

①8,888,800円×20.42%=1,815,092.96円

 

②1,815,092円

確定申告との関係

 

退職金から天引きされる所得税の金額が簡易的な方法で計算されており、その金額が正規の方法で計算された所得税の金額より高額であった場合では、退職者本人が確定申告を行うことにより、所得税の還付を受けることができます。

 

また、退職金から天引きされる所得税の金額が正規の方法で計算されていた場合でも、医療費控除のような所得控除の金額が多いケース等では、確定申告を行うことにより還付を受けられる可能性があります。

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